2020.07.27

「にっぽんの夏」のてしごと

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梅雨が明けるとあつい夏の到来。

みなさんはどんな風にお過ごしでしょうか?

日本には古くから季節感や涼しさを“五感”で感じる文化があります。

日本の夏の風物詩とも言えるうちわ、風鈴、蚊取り線香。古き良き日本の文化を現代にも引き継いでいけるように、今では洋室のインテリアにも合うようなデザインのものもずいぶん増えてきました。

今回、ご紹介するのは熊本県で国指定伝統的工芸品にも選ばれている「来民うちわ」です。

県北の山鹿市東部・鹿本町来民(くたみ)で作られてきた来民渋うちわ。来民は、京都や四国丸亀と共にうちわの三大産地といわれていました。慶長5年(1600年)、四国丸亀の旅僧が一宿の謝礼としてうちわの製法を伝授したのが来民渋うちわの始まりといわれています。

表面を柿渋で塗った来民渋うちわは、純粋に柿渋だけを引いた薄茶色で「白渋」と表現されます。和紙の張り方は、骨全体に和紙を張って骨を隠した「元張り」。原料は、阿蘇外輪山の山林に繁茂する7寸以上の真竹、手漉きの和紙に生麩糊、仕上げは柿渋・ワニス・漆・染料と、いずれも昔ながらのものです。

職人により、1本1本ていねいに和紙を貼り、いくつかの工程を経て仕上げられる柿渋和紙は、月日を重ね、だんだんと味わい深い色合いになります。乱暴に使わなければ100年以上もつといわれ、まさに一生もの。
手仕事のうちわから生まれる心地いい風と、柿渋の色を愉しむ時間を過ごしてみてはいかがでしょうか